男性アイドルグループのメンバーが女子高校生に対してわいせつ行為をしたとのニュースが連日取り沙汰されていましたが、5月1日付で不起訴処分となったようです。

報道では被害者である女子高校生と示談が成立していることの影響が大きいとの見方がされていますが、被害者と示談が成立していることは検察官の起訴・不起訴の判断にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

この点については改正刑法施行(平成29年7月13日)の前後で大きく状況が異なります。

従来の刑法では強制わいせつは親告罪(被害者の告訴がない場合には犯罪成立が明らかな場合であっても起訴できない)とされていたため、被害者の間で示談が成立する等して被害者が被害届を取り下げた場合、起訴されることはありませんでした。
すなわち、被害者と示談(及び被害届の取下げ)が成立するか否かが検察官の起訴・不起訴の判断に直結していました。

一方、改正刑法では強制わいせつが親告罪から外されたため、被害者の間で示談が成立する等して被害者が被害届を取り下げた場合でも検察官の判断により起訴することができることとなりました。
すなわち、被害者と示談が成立するか否かは検察官の起訴・不起訴の判断に直結することはなくなりました。
しかし、刑法が強制わいせつという犯罪を設けて保護しようとする利益は被害者の性的自由ですので、強制わいせつが親告罪でなくなったとしても、被害者との間で示談が成立しているという事情を検察官として無視することはできず、不起訴方向に大きな影響力を及ぼすことに変わりはありません。

以上より、刑法改正の前後で被害者との示談が検察官の起訴・不起訴に与える影響の程度は変化しましたが、依然として大きな影響力を有しているという点では変更がないという結論になるかと思います。