公務執行妨害罪とは?

・公務員が職務を執行するに当たり,これに対して暴行又は強迫を加えた場合に成立する犯罪です(刑法第95条1項)。
・公務執行妨害罪の保護法益は,公務員個人の安全ではなく,公務そのものと解されています(最判昭和28年10月2日)。
「公務員」とは,国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員,委員その他の職員をいいます(刑法7条)。具体的には,警察官,役所の職員,公立学校の教職員,自衛隊,消防士,議員などが当たります。
「公務」には,広く公務員の取り扱う各種各様の事務のすべてが含まれます(最判昭和53年6月29日)。
「暴行」とは,公務員に向けられた有形力の行使をいいます。これは,暴行罪における暴行よりも広義に捉えられ,間接的に公務員に向けられた行為も含まれます。

 

例えば,公務員がタバコを押収し,トラックに積み込んだところ,タバコを路上に投げ捨てた行為や(最判昭和26年3月20日),警察官が現行犯逮捕の現場で証拠として差し押さえた覚せい剤のアンプルを足で踏みつけて損壊する行為は,「暴行」に当たります(最判昭和34年8月27日)。
また,警察官を殴る唾を吐きかける,コップの水を浴びせるなどの行為は暴行に当たります。

・法定刑は「3年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金」です。

 

弁護活動のポイント

平成30年1月現在の法律では,捜査段階において,被疑者国選弁護人の対象外となりますので,当然に弁護人が選任されることはありません。したがって,まずは私選や日弁連の援助を利用して,弁護人を選任することが必要となります。

弁護活動のポイントは,事実関係に争いがなく,ご本人の落ち度が明らかな場合には,暴行の相手方と示談すること(ただし公務執行妨害罪における被害者には当たりません),反省を示すことなどが挙げられます。純粋な私人とは異なり,示談交渉が難航することも少なくありませんが,弁護士が選任されない場合と比較して,示談成立の見込みは高くなるといえます。そして,起訴前に示談が成立すれば,不起訴処分を得られる見込みも上がります。

ところで,公務執行妨害罪が成立するためには,職務の適法性が求められると解されます。仮に,公務員の行う職務が違法であった場合には,公務員に対して暴行や脅迫を加えていたとしても公務執行妨害罪が成立しない余地があります。したがって,このような場合には,公務員の行った職務の違法性を指摘することが必要です。
なお,違法とまでは言えないとしても,犯行態様や犯行に至る経緯,動機に関わる場合には,被告人に有利な事情として主張することは変わりありません。

Q&A

⑴ 公務員に暴行した場合は,いつでも公務執行妨害罪が成立するの?
→いいえ。公務執行妨害罪は,公務そのものを保護法益としておりますので,例えば,交代制当直勤務中の警察官であっても,当直室で休憩している場合や休憩のために当直室に行こうとしていた場合には,勤務時間内であっても,公務の執行中に当たらず,本罪は成立しないと考えられます(大阪高判昭和53年12月7日高刑31巻3号313頁)。

 

⑵ 違法な公務とはどのような場合ですか?
→例えば,警察官が入場料金の支払示談あっせん行為を行った場合には,警察官の職務権限を欠く行為であり適法な職務とはいえません(大判対象4年10月6日)。現行犯逮捕の要件(刑事訴訟法212条)を備えていないのに逮捕する行為は,適法な職務には当たらないと考えられます(大阪地判昭和31年11月8日)。通常逮捕の場合には,逮捕する際に令状を呈示することが必要ですが(刑事訴訟法201条1項),令状を呈示しなかった場合も同様です(大阪高判昭和32年7月22日)。