近年、鉄道職員に対する暴力事件が増加しているようです。
たびたび報道で目にすることもあります。

平成27年12月に発表された国交省鉄道局鉄道サービス政策室の資料(鉄道係員に対する暴力行為の実態調査結果について)によれば、2014(平成26)年には、鉄道職員に対する暴力が887件確認されたそうで、その内、62%が飲酒をしていたという事です。

ついついお酒を飲みすぎてしまい、記憶が曖昧になることは、経験がある人も多いと思います。それでは、「記憶が無いが駅員に暴行を働いてしまったようだ」という場合は、どのような処罰をされるでしょうか。

まず、胸倉をつかむとか押し倒す等の暴力を加えた場合、暴行罪(刑法第208条)にあたる可能性があります。この場合、「2年以下の懲役または30万円以下の罰金または拘留」という処罰を受ける可能性があります。

上記の発表資料によると、以下のようなケースがあったそうです。

 

・走行中の列車内で乗客同士が揉めていたため、駅到着後仲裁に駅員が仲裁に入った際に眉間を殴打された。(30代男性、全治5日間)

 

・終列車終端駅にて車内で寝ていた乗客をホームに誘導したが、ホーム上で暴れ出し、止めに入った駅員に対して、左手を引っ掻き出血させた上、鼻に噛みつく、頭突きをするなどの暴行行為を受けた。本件は検察庁に書類送検された。(加害者 20代)

 

・自動改札機のエラー表示があり、出場できない利用者が暴れ出し、左頬を殴られ、膝で腹を数回蹴られ負傷した。加害者は暴行罪で起訴された。(全治5日間、加害者60代)

 

・乗客が携帯電話で通話していたので、車内では遠慮いただくようお願いしたところ、突然暴力行為を受けた。(全治3日間、加害者60代)

なお、法律上、「暴行」は、「人に対する不法な有形力の行使」と定義づけられています。したがって、叩いたり蹴ったりするだけではなく、唾をはきかけたり、狭い室内で凶器を振り回す行為も、暴行になり得ます。

相手の怪我の状況によっては傷害罪として処罰されることにもなります。

傷害罪の場合、「1か月以上15年以下の懲役、または1万円以上50万円以下の罰金」と、暴行罪より重い法定刑になっています。

 

●それでは、「酔っていて記憶が無い」という場合に、処罰を免れるでしょうか?

結論から言うと、処罰を免れる事はできません。いくら酔っていても、暴行罪・傷害罪にあたってしまいます。

刑事事件は、判断能力(専門用語で責任能力)が無いと諸処罰できないのが原則ですが、自分で飲酒をしてその原因を作った以上は、判断能力が無いとは言えないと考えられています。

そして、暴行罪・傷害罪の場合、逮捕、勾留をされる可能性も十分にあります。

そのままだと、会社や学校を休まざるを得ないなどの不利益も被ります。

 

●もし、このような状況に陥ってしまった場合

 

まずは、きとんと謝罪をして、損害がでていたら損害賠償をすることです。

そのようにして、被害者に許してもらい、「示談」ができたら、被害届を取り下げてもらう事により、逮捕・勾留を免れる可能性が高くなります。また、不起訴となり、前科も付けないようにするとういう事も可能となります。

個人で示談をするのは難しいとは思いますので、このような状況になったならば、まずは早急に弁護士に相談をして、最善策について相談するべきでしょう。

当事務所では、駅でのトラブル(暴行、痴漢等)について多くのご相談をいただいています。刑事専門チームが的確なアドバイスをしますので、一度ご相談ください。

初回相談(30分)は、無料となります。