似た表現の言葉ですが2つの言葉の間には大きな差がありますので、今回はその区別について説明してみようと思います。

1 どのように区別されている?
⑴ 前科
これは刑事裁判で有罪判決を受けたことがあることを意味します。
有罪判決の種別(懲役・禁錮・罰金)は問わず、執行猶予判決を受けた場合も前科となります。
そのため、刑事事件を起こし起訴された場合、無罪判決を得ない限りは何らかの前科がつくことになり、その意味で起訴処分と不起訴処分との間には歴然とした差があります。
なお、交通違反をしてそのまま反則金を支払ったという場合、刑事裁判を受けたわけではないため前科にはなりません。

⑵ 前歴
これは犯罪捜査のため捜査機関に逮捕されたことがあることを意味します。
誤認逮捕等の場合を除き、逮捕された時点で前歴となりますので、その後の捜査により不起訴処分となった場合にも前歴は残ってしまいます。

2 どこに記録されていつまで残る?
⑴ まず、捜査機関が作成する前科・前歴のデータベースに記録されます。
当該データは記録された者が死亡するまで残され、再犯の場合の考慮要素として、また、犯罪捜査のために使用されます。

⑵ 次に、罰金以上の前科(交通前科を除く)がある者は、選挙資格調査のため作成される本籍地の市区町村の犯罪人名簿に記録されます。
当該記録は刑の言渡しの効力が消滅した場合に削除されます。
※ 刑の執行が終わりまたはその執行の免除を得てから、一定期間、罰金以上の刑に処せられなかった場合に刑の言渡しの効力が消滅します。
一定期間とは、禁錮以上の刑の場合は10年、罰金以下の刑の場合は5年、刑の免除を受けた場合は2年とされています。

3 他人の前科・前歴を調べることはできる?
捜査機関や市区町村に照会をかけても前科・前歴が開示されることはありません。
ただし、大きく報道された事件等ではインターネット上に情報が残る場合があり、そこから他人の知るところになるという可能性があります。