紛争の内容

覚せい剤取締法違反の罪で執行猶予中に,再度,覚せい剤取締法違反で逮捕,起訴されました。本人には身寄りがなく,実刑判決は避けられない状況でした。

 

交渉・調停・訴訟などの経過

裁判では,執行猶予中に薬物の通院治療実績もあったことや,本人の意思,今後予定されている入通院治療を踏まえ,有利な情状を主張しました。

 

本事例の結末

検察官からは,3年の実刑求刑をされましたが,判決では2年6ヶ月の懲役及びその内6ヶ月を2年間執行猶予とし,保護観察に付する旨の判決(一部執行猶予判決)が出されました。

 

本事例に学ぶこと

覚せい剤取締法違反については,多くの場合,尿から覚せい剤が検出されるため,起訴される可能性が高く,同違反を繰り返すと,やがて実刑判決が下ります。

ところで,平成28年6月からは,改正された「刑法」及び「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律」が施行され,執行猶予を部分的に付すことが可能となりました。

なお,具体的には,この対象となるのは,以下の要件を満たす場合です(刑法27条の2)。

①前科要件

ⅰ 前に禁錮以上の実刑に処せられたことがない者,

ⅱ 前に禁錮以上の刑に処されたことがあっても,全部の執行を猶予された者,

ⅲ 前に禁錮以上の刑に処されたことがあっても,その執行終了等の日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

※ 但し,「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部執行猶予に関する法律」により,要件が変更され,覚せい剤などの違法薬物の所持や使用については,前科の有無や時期にかかわらず,一部執行猶予を言い渡すことができることになります。

なお,その場合,一部執行猶予を言い渡すときは必ず保護観察をつけなければなりません。

② 判決の要件

3年以下の懲役または禁錮の言渡しを受けた場合

③ 必要性や相当性の要件

犯罪の経緯に関する事情などを考慮して再犯防止のために必要かつ相当であると認められるとき。