①飲酒運転で歩行者を怪我させてしまった被疑者について、自動車運転過失致傷の罪については不起訴とすることができた事例

②被疑者は、70代の男性でした。
 所用で夜間外出した際に店舗で飲酒し、帰宅する途中でハンドル操作を誤った結果、ガードレール内側の歩道を歩行中の被害者にぶつかり、隣接する店舗の入口ドアに衝突する形で停止したという事案です。
 被疑者は、現行犯逮捕されたものの、親族の身元引受人があったことから、勾留はされずに帰宅することができました。

③当事務所は、釈放後に相談をうけた後に受任することになりました。
 この事案は、起訴された場合には執行猶予が付される可能性が高い事案ではありましたが、被害者は、命には別状はないものの長期の入院が必要になるほど怪我は大きかったこと、昨今の飲酒運転への社会的な批判の高まりに鑑みると、実刑の可能性も僅かながらにある事案と考えられましたので、念のためその可能性だけは指摘しておきました。
 この被疑者は任意保険に加入していましたので、保険会社の担当者と連絡を取って被害者の怪我の状況を聞くとともに、それまでに支払った賠償金額(治療費、休業損害等)と一覧を開示して貰いました。
 また、ドアを壊してしまった店舗とも示談ができていましたので、その資料も貰いました。
 被疑者自身に謝罪文及び反省文を認めて貰い、検察官を通じてお見舞いの承諾を得た上で、被害者へのお見舞いに月に一度程度行って貰いました。その席上で、謝罪文は受け取って貰うことができました。
 更に、被疑者には、自動車を処分してもらい、免許も処分を受ける前に返上して貰いました。

④そして、以上の各資料、つまり、保険会社からの資料、謝罪文、反省文、親族の身元引受書、自動車の売買契約書、免許返納の証明書などとともに、弁護士名で不起訴処分として欲しい旨の意見書を作成し、検察官に提出しました。
 その結果、数週間後、検察官から、自動車運転過失致傷については不起訴処分とする連絡が入りました。(飲酒運転=道路交通法違反は、罰金刑。)
 不起訴処分告知書を渡した際、二度と自動車の運転をしないこと、これからも被害者をお見舞いに行くことを話して下さった被疑者は、反省しているとともに、安堵している様子でした。
 被疑者に反省していただくこと、被害者に適切な賠償を受けて貰うこと、そして、被疑者に社会復帰して更正してもらうこと、これらが刑事弁護の中で大切なことではないかと考えています。