紛争の内容
ご依頼者の方は、不同意性交の被疑事実で捜査機関による捜査を受けることになりました。事案の経緯としては、インターネットのマッチングアプリを通じて相手方と知り合い、双方の合意のもとでホテルへ赴き、性的な行為に及んだというものです。その後、相手方から被害届が提出されたことにより、ご依頼者の方は被疑者として捜査の対象となりました。ご依頼者の方は、行為に至るまでの経緯において双方に合意があったと認識しており、冤罪であるとして否認の意向を示しておられました。

交渉・調停・訴訟等の経過
ご依頼者の方から受任後、弁護人として以下の活動を行いました。まず、ご依頼者の方が一貫して同意の存在を主張していたことから、冤罪事件として否認を続ける方針を取りました。捜査機関および検察に対しては、弁護人を通じて事実関係を整理したうえで、法的な構成に基づく主張書面を提出し、不起訴処分の相当性を訴えました。
一方で、事案を詳細に検討したところ、当初の行為に際してご依頼者の方が一定の金銭を支払う約束をしていたにもかかわらず、その支払いが履行されていなかったという事実が明らかになりました。この点について、弁護人から当該金銭を支払うことで、相手方の被害感情を解消することが可能であると判断しました。そこで、弁護人を通じて相手方との示談交渉を進め、未払いの金銭を弁護人から支払ったうえで、本件について被害感情がなくなった旨を明記した示談書を作成・締結するに至りました。

本事例の結末
捜査機関・検察への法的主張の提出および示談書の締結という一連の弁護活動の結果、検察官は不起訴処分の決定を下しました。これにより、ご依頼者の方は前科が付くことなく、本件を終結させることができました。

本事例に学ぶこと
本事例からは、いくつかの重要な教訓を読み取ることができます。
まず、被疑事実を否認する事案においても、ただ否認を続けるだけでなく、弁護人が法的な構成に基づく主張を捜査機関・検察に対して積極的に行うことが不可欠であるということです。事実関係を丁寧に整理し、法律の観点から説得力のある主張を組み立てることが、処分の結果に大きく影響します。
次に、事案の全体像を細部まで把握することの重要性です。本件では、金銭の支払い約束が履行されていなかったという事実が、示談交渉の糸口となりました。このような細部の事実が、解決の方向性を左右することがあるため、弁護人による丁寧な事実確認が非常に重要です。
また、否認事件であっても、相手方との示談交渉を適切に進めることが有効な解決手段となり得るという点も重要です。否認と示談は相反するものと捉えられることもありますが、金銭の支払いという別個の問題を解決することで相手方の被害感情を解消し、事件全体の妥当な解決につなげることは十分に可能です。
最後に、性犯罪に関する被疑事件は、逮捕・起訴されるだけで社会的信用や日常生活に深刻な影響を及ぼすおそれがあります。そのため、被疑事実の告知を受けた段階で直ちに弁護人に相談し、迅速かつ的確な対応を取ることが、前科を防ぎ、ご依頼者の方の権利と生活を守るうえで極めて重要であると言えます。

弁護士 遠藤 吏恭