紛争の内容
ご依頼者の方は、過去に身に覚えのない罪で捜査を受け、起訴されるという過酷な状況に置かれていました。当事務所が弁護人を務めた刑事裁判の結果、無実が証明され「無罪判決」を獲得しましたが、判決が出るまでの間、ご依頼者の方は長期間にわたって身柄を拘束されていました。
無罪が確定したということは、本来受ける必要のなかった不当な拘束であったことを意味します。失われた自由な時間や、精神的な苦痛、社会的な不利益は計り知れません。これらを事後的に補填し、国家としての責任を明確にするために、刑事補償法に基づいた「刑事補償金」の支払いを目指して手続きを行うこととなりました。
交渉・調停・訴訟等の経過
無罪判決が確定した後、速やかに裁判所に対して刑事補償請求の申し立てを行いました。
刑事補償金は、身柄拘束の日数に応じて一定の金額(法律で定められた範囲内)が支払われる制度です。
手続きにおいては、ご依頼者の方が拘束されていた期間を正確に算定し、裁判所に対して適正な補償が行われるよう働きかけました。また、ご依頼者の方は刑事裁判という大きな闘いを終えた直後であり、精神的な疲弊も色濃く残っていたため、単なる書面作成代行にとどまらず、心理的な負担を少しでも軽減できるよう継続的なコミュニケーションを重視して進めてまいりました。
本事例の結末
裁判所より刑事補償を認める決定が下され、ご依頼者の方に対して法律に基づいた補償金が全額支払われました。これにより、金銭的な側面から一定の救済がなされるとともに、国家による誤った拘束に対する公的なけじめをつけることができました。
本事例に学ぶこと
本事例を通じて痛感させられるのは、刑事事件における無罪判決はゴールであると同時に、傷ついた生活を再建するためのスタート地点に過ぎないということです。
無罪を勝ち取ったとしても、奪われた時間や精神的なダメージが自動的に回復するわけではありません。刑事補償金の受け取りは、失われた時間そのものを取り戻す手段にはなり得ませんが、不当な国家権力の行使によって生じた損害を補填し、ご依頼者の方の今後の人生を支える一助として極めて重要な意味を持ちます。
また、弁護士の役割は判決を得ることで終わるのではなく、その後の名誉回復や公的救済まで含めて、ご依頼者の方に寄り添い続けることにあると改めて実感いたしました。いわれのない罪で戦い抜いたご依頼者の方の負担を少しでも和らげ、平穏な日常を取り戻すためのトータルなサポートの重要性が、本事例には深く刻まれています。
弁護士 遠藤 吏恭







