殺人罪(殺人予備、同意殺人)について

⑴殺人罪
・殺人罪は、刑法199条に、「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。」と規定されています。
・刑事罰は、死刑・無期懲役・5年以下(20年以下)の懲役となっています。

⑵殺人予備罪
・殺人予備罪は、「殺人の罪を犯す目的で、その予備をした者は、2年以下の懲役に処する」と規定されています(刑法201条)。
・殺人の予備とは、殺人の実行の着手にいたる前の準備行為等と説明されますが、要は、殺人のための準備という事になります。

⑶同意殺人罪
・同意殺人罪は、「人をその嘱託を受け若しくは、その承諾を得て殺したものは、6月以上7年以下の懲役または禁錮に処する」規定されています(刑法202条後段)。

殺人罪の弁護活動のポイント

殺人罪は、重い罪であり、基本的には執行猶予はつきません。そもそも、執行猶予が付けられるのは、3年以下の懲役の場合であるのに、殺人罪は、5年以上の懲役となっているからです。
ただし、殺人罪でも、執行猶予がつくケースはあります。

【ケース1】
「夫の介護を続けていた妻が、昔の不倫相手である若い女性の話をされ、その怒りと介護の不安が原因で、夫を殴って殺した事例。裁判所は、妻に対し、懲役3年執行猶予5年の判決を下した(平成27年6月25日)。」

【ケース2】
「認知症の母親の介護に専念するため仕事を辞めた男性が、生活に困窮した末、「最後の親孝行」として母親を車椅子に乗せて、京都観光をしたのち無理心中を図った事例。男性だけが生き残り、承諾殺人罪に問われた。裁判所は、男性に対して懲役2年6月執行猶予3年の判決を言い渡した(平成18年7月21日)」

情状酌量の余地があれば、刑が半分になるので、殺人罪でも執行猶予がつく可能性が出てきます。そこで、例えば、遺族と示談ができたとか、加害者に同情すべき事実があったとか、特別に考慮すべき事実を主張していくことになります。