事案の概要
亡くなった父が生存していると装って書類作成、提出し、年金を不正受給し続けたとして起訴された事例です。
被告人は、自身の父が亡くなったあとに、父宛に生存確認の通知が来ていることに気づき、「これを出せば、年金を受け取り続けられるのだろうか」などと思い、あたかも父が生存しているかのように書面を提出し、年金を受領し続けました。後日、被害者となる日本年金機構にて、被告人の父が亡くなっていることが発覚し、警察に被害届が出されたことから有印私文書偽造・同行使・詐欺の被疑者として、逮捕・勾留されました。
経過
被告人は、自身の行為についてはいずれも認めていたものの、既に受領した年金は費消してしまっており、家族らも経済的に困窮していたことから、被害弁償は難しいかと思われました。しかし、弁護人としては被告人の反省を裁判所に伝えるためには、まずは被害弁償をすることが大事であると説得し、知人らから被害弁償に充てる資金の一部を集め、何とか一部の被害弁償をすることができました。
また、被告人の家族には、なぜこのような詐欺行為などを被告人がしてしまったのかをよく考えてもらい、今後被告人が同様の犯罪をしないために家族のコミュニケーションをとってもらうようにしました。
本事例の結末・結果
本件については、上記のとおり被害弁償は全額適わなかったものの、被告人の反省や被害者への弁償の努力、家族の監督等の誓約などがそれぞれ評価され、執行猶予つきの判決を受けることができました。