紛争の内容
ご依頼者の方は、複数人で一人の方に対して不同意性交を行ったとして疑いをかけられた少年事件です。ご依頼者の方が現場にいたこと自体は事実であり、何らかの関わりがあったことも否定できない状況でした。しかしながら、ご依頼者の方の認識としては、相手方が同意していたと考えており、「不同意性」の有無に争いがある事案でした。複数人が関与していたという事実関係から、外形的にはご依頼者の方に著しく不利な状況であり、捜査機関からの疑いも強いものでした。
交渉・調停・訴訟等の経過
弁護士は受任後、ご依頼者の方から詳細な事情聴取を行い、当時の状況を丁寧に把握することから始めました。不同意性の有無を判断するにあたっては、事件当時のチャットのやり取り、それ以前からの関係性の経緯、そして事件後の連絡内容や行動の経緯など、事案に関わる細かな事情を一つひとつ丁寧に精査しました。
これらの事情を総合的に検討した結果、相手方の同意があったことを示す客観的な事情が複数存在することが明らかになりました。弁護士はこれらを整理・分析し、嫌疑不十分であることを論理的に示す意見書を作成して検察官に提出しました。外形的に不利な状況の中でも、事実に即した主張を丁寧に積み上げることで、捜査機関に対してご依頼者の方の立場を明確に伝える活動を続けました。
本事例の結末
検察官による慎重な検討の結果、嫌疑不十分として不起訴処分となりました。少年事件においては、不起訴となった場合でも家庭裁判所に送致されるケースがありますが、本件では嫌疑不十分という判断であったことから、家庭裁判所への送致もなく、ご依頼者の方はそのまま釈放されました。前途ある少年が、やっていないことで処分を受けるという最悪の事態を回避することができた事例です。
本事例に学ぶこと
自分に不利に見える状況であっても、事実と異なる内容を認めてしまうことは絶対に避けなければなりません。本事例では、複数人が関与していたという外形的な事実から、ご依頼者の方に著しく不利な状況が生じていました。そのような局面では、「認めてしまった方が早く終わるのではないか」という気持ちが頭をよぎることもあるかもしれません。しかし、やっていないことはやっていないのであり、事実に反する自白は取り返しのつかない結果をもたらします。不利な状況であればあるほど、早期に弁護士に相談し、正しい方針のもとで対応することが重要です。
不同意性交等事件における「同意の有無」は、事件当時の状況だけでなく、それ以前からの関係性やその後の経緯など、多角的な事情を総合して判断されます。本事例では、チャット履歴や関係性の経緯といった客観的な証拠が、同意の存在を示す重要な事情として機能しました。刑事事件においては、こうした細かな事情の一つひとつが結果を左右することがあります。弁護士が早期に介入し、関係する証拠や事情を迅速に把握・保全することが、その後の弁護活動の質を大きく左右します。
また、被疑者段階における弁護活動の重要性も、本事例は示しています。起訴されてから争うよりも、起訴される前の被疑者段階で検察官に対して適切な働きかけを行うことが、不起訴という最善の結果につながります。一度起訴されてしまうと、無罪判決を得ることは統計的にも極めて困難です。本事例のように、意見書の提出という形で検察官の判断に働きかけることが、いかに大きな意味を持つかを改めて認識していただければと思います。
少年事件においては、処分の結果がその後の人生に与える影響が成人以上に大きくなることがあります。本事例では、嫌疑不十分という形での不起訴・即時釈放という結果を得ることができましたが、もし事実に反して認めてしまっていた場合、家庭裁判所への送致、さらには少年院送致という事態にもなりかねませんでした。前途ある若い方の人生を守るためにも、たとえ状況が不利に見えても事実を丁寧に主張し続けることの大切さを、本事例は伝えています。
弁護士 遠藤 吏恭







