大切なお子様が事件に巻き込まれて、警察に連行されたという知らせを受けたとき、保護者の方が抱く不安は計り知れません。

成人の刑事事件であれば、本人が犯した罪に対して科される「刑罰」が主な目的となりますが、少年の場合は「更生」と「健やかな育成」を理念とした、全く異なる手続が進められることになります 。

少年法に基づく手続は、成人の刑事手続とは用語も仕組みも大きく異なります。本コラムでは、少年事件の特殊性と、家庭裁判所送致から少年院送致に至るまでの流れ、そしてお子様の未来を守るために家族と弁護士ができることについて、埼玉県大宮の弁護士が5,000文字のボリュームで詳しく解説します。

少年事件の根幹をなす「保護主義」と「全件送致主義」

日本の司法制度において、20歳未満の少年が非行を犯した場合、成人とは全く異なる思想に基づく手続が適用されます。成人の刑事手続においては、検察官が証拠の強さや情状を鑑みて「起訴(裁判にかける)」か「不起訴(裁判にかけない)」かを判断します 。

しかし、少年の事件では「全件送致主義」という原則が採られています。これは、罪の成立がある限り、警察や検察が捜査を終えたすべての事件を、最終的に家庭裁判所に送らなければならないという仕組みです。

家庭裁判所は、単に「罪を犯したか」という過去の事実を判断するだけでなく、「なぜ事件を起こしたのか」「どのような教育的働きかけが必要か」という、少年の将来を見据えた判断を行います。

この背景には「保護主義」という理念があります 。少年はまだ心身ともに発達の途上にあり、適切な教育や環境調整によって性格の歪みを矯正できる可能性が高いと考えられているためです。そのため、少年事件では「罰を与える」ことよりも「更生させる」ことに重きが置かれます 。

逮捕から鑑別所入所までのスピード感と弁護士の役割

少年が警察に逮捕された場合、初期段階の流れは成人と同様のタイムリミットで進行します。逮捕から勾留(または観護措置)が決定するまでの最大72時間は、その後の生活に決定的な影響を与える極めて重要な期間です 。

Q:逮捕されるとどうなるのですか?
A: 逮捕されると通常は、警察署へ連れていかれたあとに、48時間以内に事件を検察庁へもっていかれます。軽微な事件などの場合には、警察でそのまま身柄が解放されることもあります(微罪処分)。検察庁へ事件が持っていかれた場合、そこから24時間以内に検察庁が身柄を勾留するかどうかを判断します。

少年の場合、成人のように警察署の留置場に長期間留まる「勾留」だけでなく、家庭裁判所の判断によって「観護措置」がとられることが一般的です。

観護措置が決定されると、少年は通常「少年鑑別所」に収容されることになります。

鑑別所は、刑務所や少年院とは異なり、専門の技官(心理学等の専門家)が少年の資質や性格、非行の原因を科学的に分析する場所です。しかし、そこは外部との連絡が厳しく制限された閉鎖的な環境であり、多感な時期の少年がたった一人で過ごすことは大きな不安を伴います。

家庭裁判所調査官による「社会調査」の影響力

事件が家庭裁判所に送致されると、裁判官のほかに「裁判所調査官」という専門職が深く関与します。調査官は、少年の家庭環境、学校での成績や素行、友人関係、そして保護者の監督能力などを詳しく調査します。これを「社会調査」と呼びます。

調査官は少年本人や保護者と何度も面談を重ね、「なぜこの子がこの事件を起こしてしまったのか」という背景を掘り下げます。調査官が作成する報告書は、審判の結果を左右する極めて重要な資料となります。

保護者の方は、調査官に対して単に「うちの子は良い子です」と擁護するだけでは不十分です。事件という現実を正面から受け止め、家庭内の問題点(コミュニケーション不足や過干渉など)を直視し、具体的にどう改善していくかを提示する誠実な姿勢が求められます 。

審判(成人の裁判に相当するもの)と下される処分

すべての調査が終わると、家庭裁判所で「審判」が開かれます。成人の裁判が公開の法廷で行われるのに対し、少年の審判は非公開で行われ、落ち着いた雰囲気の中で話し合いに近い形式で進められます。

審判の場で、裁判官が最終的な「処分」を決定します。

不処分

事件が軽微であり、かつ本人や家庭に更生能力が十分に認められる場合。

保護観察

少年を施設に入れず、社会の中で生活させながら、保護司等の指導・監督を受けさせる処分。

少年院送致

社会内での更生が困難であり、閉鎖的な施設での専門的な矯正教育が必要であると判断された場合。

検察官送致(逆送)

事件が重大であり、成人と同様の刑事罰を科すべきと判断された場合(14歳以上が対象)。

「少年院送致」を回避できるかどうかの境界線は、犯した罪の重さだけではなく、本人の「反省の深さ」と、何より「家庭の監督体制の実効性」にあります 。

18歳・19歳の「特定少年」に関する重要な変更点

2022年の少年法改正により、18歳および19歳の少年は「特定少年」と位置づけられることになりました。特定少年も依然として少年法の適用対象であり、家庭裁判所での審判が行われますが、一部の手続において成人寄りの厳しい運用がなされます。

逆送対象事件の拡大

強盗や不同意性交等のほか、法定刑の下限が1年以上の懲役・禁錮にあたる罪を犯した場合も、原則として検察官に送致(逆送)されるようになりました。

実名報道(推知報道)の解禁

特定少年が起訴された段階で、氏名や顔写真などの報道が可能になります。

刑罰の柔軟性の制限

成人と同様の不定期刑(刑期に幅を持たせる刑)の適用が一部制限されます。

特定少年の事件であっても、初期段階で弁護士(付添人)が介入し、家庭裁判所に対して「刑事罰よりも保護処分が適切である」という意見を論理的に提示することが、お子様の将来を守るために不可欠です。

付添人(弁護士)が展開する「環境調整」の実務

少年事件において、弁護士は「付添人」という名称で活動します。付添人の最も重要な職務の一つが「環境調整」です。少年が二度と事件を起こさないためには、本人の決意だけでなく、本人を取り巻く環境を根底から変える必要があります。

具体的には、以下のような活動を行います。

被害者との示談交渉

真摯な謝罪と被害弁償を行い、被害者の方から「許し(宥恕)」を得ること。これは処分を軽くするための最も強力な情状となります。

被害者がいる事案の場合、当時者同士の直接の連絡は避けるべきであるため、弁護士(付添人)の介入が必須となります。

家庭環境の改善に向けて活動

保護者と面談を重ね、監督方法(スマートフォンの制限や外出のルールなど)を具体化します。保護者の方に身元引受書を作成していただき、それを裁判所に提出するなど具体的に可視化できるかたちで表します。

学校・職場との調整

事件によって退学や解雇にならないよう、学校や職場に対して更生への協力を求めます。こうした学校や職場からの支援があるということも報告書などにしてまとめることで、裁判所の心証を有利に動かすことが期待できます。

専門機関との連携

依存症や発達障害などの背景がある場合、適切な医療機関や福祉施設に繋ぎます。

こうした福祉施設につながっていることを裁判所に報告することで、すでに適切な措置がなされていると判断されて、重い処分を回避できる可能性が高くなります。

Q:勾留(収容)されたらもう家には帰れないのですか?
A: 裁判官が身柄拘束を決定すると、その期間は帰ることができません。しかし、決定に理由がないと不服を申し立てる「準抗告」を行うことで、身柄が解放されることもあります。

少年事件でも、この「準抗告」を活用し、一刻も早く家庭に戻して、在宅のまま調査や審判を受けられるよう尽力します。社会との接点を断たせないことが、更生への第一歩となるからです 。

家族にできる唯一、かつ最大のサポート

お子様が逮捕されたという現実に、保護者の方は「なぜあんなことを」「自分の育て方が悪かったのか」と自分を責め、絶望的な気持ちになるかもしれません。しかし、親がパニックになってしまえば、最も不安を感じているお子様を支えることができません。

保護者が今すべきことは、一刻も早く刑事弁護と少年事件に精通した弁護士を呼び、お子様と「法的な対話」をさせることです。

Q:どうすれば身柄を解放してもらえますか?
A: 弁護士は、本人が逃亡したり証拠を隠したりするおそれがないことを論理的に示した意見書を提出します。また、家族が身元引受人としてしっかり監督することを裁判官に伝え、身柄拘束の必要性がないことを認めさせます。

少年事件において、早すぎる相談というものは存在しません 。警察署での過酷な取調べが進み、本人が自暴自棄になってしまう前に、専門家によるサポートを届けてください。

結論 事件を「絶望」ではなく「更生の出発点」に変えるために

少年事件の手続は、淡々と事実を積み上げるならば、非常に硬直的で厳しいものです。しかし、法律という精緻な論理を用い、本人の置かれた状況を客観的な証拠で丁寧に解き明かしていくことで、司法の判断を「教育的な寛容さ」へと動かすことは可能です。

執行猶予や保護観察といった処分はゴールではありません。そこから本当の意味での償いと社会復帰が始まります 。

少年事件の場合、成人の事件とは手続きが異なることから、専門的な知見や経験が求められます。少しでもお悩みの方はぜひ一度ご相談下さい。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 遠藤 吏恭

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