紛争の内容
ご依頼者の方は、日本に在住する外国人少年であり、比較的軽微な事件で逮捕・勾留されたという少年事件です。被疑者段階では別の弁護人が担当していましたが、家庭裁判所に送致された後はその弁護人が引き続き担当しないこととなり、ご依頼者の方の弁護活動が宙ぶらりんの状態になってしまいました。そのような状況の中で、当事務所にご依頼をいただいた事案です。事件の内容は比較的軽微であり、初非行であったことから、少年院送致などの重い処分は考えにくい状況でしたが、適切な付添人弁護活動が必要な状態でした。

交渉・調停・訴訟等の経過
弁護士は受任後、本件の事情を丁寧に整理しました。ご依頼者の方には、まもなく祖国に帰国し、現地で就労・生活するという具体的な見通しがすでに決まっていました。この事情を踏まえ、弁護士は日本国内での保護観察等の処分を課すことの実効性に疑問を感じました。仮に日本で保護観察処分がなされたとしても、帰国予定がある以上、途中で監督が途切れてしまう可能性があります。それよりも、祖国において就労環境が整い、監督してくれる人のもとで生活・労働する方が、ご依頼者の方の真の更生に資すると判断しました。

そこで弁護士は、通訳を介してご依頼者の方の祖国にいる親戚や就職先の関係者に連絡を取り、帰国後の生活環境・就労環境・監督体制について具体的な情報を収集しました。それらをもとに、帰国後の生活の見通しと更生の展望を丁寧にまとめた意見書を作成し、家庭裁判所に提出しました。

本事例の結末
家庭裁判所は弁護士の主張を受け入れ、不処分(何らの措置もしない)という決定をくださいました。日本国内での保護観察等の処分を課すことなく、ご依頼者の方は祖国に戻り、準備されていた就労・生活環境のもとで新たな生活をスタートさせることができました。軽微事案とはいえ外国人少年という特有の事情に向き合い、その少年にとって真に意味のある更生の道筋を示すことができた事例です。

本事例に学ぶこと
少年事件における弁護活動は、事件の軽重にかかわらず、その少年の個別事情に真剣に向き合うことが出発点になります。本事例では、比較的軽微な事案であり初非行でもあったことから、処分の内容だけを見れば保護観察程度が見込まれる状況でした。しかし、外国人少年という特有の事情を丁寧に検討した結果、日本国内での処分を課すことよりも不処分という判断の方がご依頼者の方の更生に真に資するという結論に至りました。少年事件においては、形式的に「こういう処分が相当」と判断するのではなく、その少年の置かれた状況を個別具体的に見極めることが何より重要です。

本事例では、弁護士が通訳を介して祖国の親戚や就職先に連絡を取り、帰国後の生活環境を具体的に確認・整備したことが、不処分という結果につながりました。更生のための環境が整っていることを言葉だけで主張するのではなく、実際に連絡を取り、具体的な事実として裁判所に示すことが説得力を生みます。弁護士が自ら動き、言語や国境の壁を越えて必要な情報を集めることが、少年事件の弁護活動においていかに重要であるかを、本事例はよく示しています。

また、被疑者段階の弁護人が家庭裁判所送致後に担当を離れるケースは珍しくなく、本事例のように弁護活動が途切れてしまう場面があることも事実です。少年審判においても、付添人弁護士が関与することで、調査官や裁判官に対して少年の事情を適切に伝え、処分の方向性に働きかけることができます。弁護士がいない状態で審判を迎えることは、少年にとって大きな不利益になりえます。少年事件においても、早期かつ継続的な弁護士の関与が重要であることを、改めて認識していただければと思います。

さらに、外国人が関係する事件では、言語・文化・生活環境の違いという固有の難しさがあります。しかしその難しさは、同時に他の事件にはない事情として、審判においてしっかりと主張できる要素にもなります。帰国後の生活環境が整っているという事実は、日本国内での処分の実効性という観点から裁判所の判断に影響を与えうる重要な事情です。外国人少年事件においても、その固有の事情を丁寧に掘り起こし、少年にとって最善の結果を追求することが弁護士の役割であることを、本事例は教えてくれます。

弁護士 遠藤 吏恭