紛争の内容
本事例は、形式的には強盗致傷罪という極めて重大な刑事事件であり、裁判員裁判の対象となる事件でした。
しかし、事案の実態としては、恐喝の際に相手方が軽微な怪我を負ってしまったというものであり、一般的なイメージの強盗致傷事件と比べると、犯罪の性質としては比較的軽微な部類に入る事案でした。
とはいえ形式的には強盗致傷罪が適用されるため、起訴されてしまうと、ご依頼者様は裁判員裁判の対象として非常に長期間にわたる身柄拘束を受けることになりかねません。さらに、仮に強盗致傷でなくとも、恐喝罪などで起訴されれば前科がついてしまいます。
そのため、ご依頼者様の前科を防ぎ、社会復帰を早期に実現するため、事件の軽微性を踏まえ、被疑者段階(起訴前)で示談を成立させ、不起訴処分を獲得することが最大の目標となりました。

交渉・調停・訴訟等の経過
事案の軽微性を検察官に理解してもらうとともに、何よりも被害者の方の心情回復と許しを得ることが急務でした。
ご依頼を受けて直ちに、弁護人から被害者の方へ連絡を取らせていただき、ご依頼者様の謝罪の気持ちを真摯にお伝えし、示談交渉を進めました。
強盗致傷という重い罪名にもかかわらず、本件が恐喝の過程で生じた傷害であり、計画性や悪質性が低いという実情を丁寧に説明するとともに、ご依頼者様が深く反省し、二度と犯罪を行わない決意であることをお伝えしました。
示談交渉は迅速に進展し、被疑者段階という起訴されるかどうかの重要な判断が行われる前に、被害者の方との間で示談を成立させることができました。示談書および被害者の方の処罰を望まない旨の書面を、直ちに検察庁へ提出いたしました。

本事例の結末
事件の実態が強盗致傷罪の中では軽微であること、そして弁護人の迅速な活動により被疑者段階で被害者との示談が成立し、被害者の方の処罰意思がなくなったことを確認されました。
その結果、ご依頼者様は強盗致傷という重罪にもかかわらず、不起訴処分を獲得することができました。これにより、ご依頼者様は前科が付くことなく、無事に元の生活に戻ることができました。

本事例に学ぶこと
本事例で学ぶべきことは、罪名や形式的な事件の大きさにかかわらず、事件の実質を把握し、被疑者段階で全力を尽くすことの重要性です。
形式的に裁判員裁判の対象となるような重大事件であっても、その実態が軽微である場合は、起訴前の段階で被害者の方との示談成立を最優先に図ることで、検察官の処分決定に大きな影響を与え、不起訴という最良の結果を引き出すことが可能になります。
特に、身柄拘束が長期化する可能性のある事案では、迅速な対応こそが、ご依頼者様の前科を阻止し、生活を守ることに直結する最大の防御策となると言えます。

弁護士 遠藤 吏恭