紛争の内容
本事例は、強盗致傷という非常に重大な刑事事件であり、裁判員裁判の対象となった事案です。ご依頼者様は、事件の首謀者から単に荷物運搬の依頼を受けて現場に赴きましたが、その場で突発的になし崩し的に犯行に協力してしまったという経緯がありました。
事件の現場におけるご依頼者様の役割と具体的な行動が争点となりました。
他の共犯者からは、ご依頼者様が現場で臨機応変に行動し、主導的な役割を果たしていたかのように主張されており、ご依頼者様は事件の主導者としての立場を着せられている状態でした。
しかし、事件における役割が従属的であるか、あるいは主導的であるかは、量刑を決定する上で極めて大きな影響を与えます。ご依頼者様の真の役割を立証し、適正な量刑を獲得することが、本事例における最大の争点となりました。
交渉・調停・訴訟等の経過
ご依頼者様の「従属的であった」という真の言い分を裁判所に認めてもらうため、公判廷において徹底した事実の追求を行いました。
具体的には、事件の重要な証人である被害者、そしてご依頼者様と役割が対立していた共犯者に対する証人尋問を実施いたしました。
特に、共犯者の証人尋問においては、共犯者の供述や事件現場での行動に矛盾や不自然な点がないかを細かく確認し、ご依頼者様が計画段階から主導的な関与をしていたわけではなく、現場で言われるがまま従属的に動かざるを得なかった状況を明確に浮き彫りにしていきました。
また、被害者の証言からは、ご依頼者様の行動が計画的・主導的というよりも、その場の状況に流されたかのような偶発的かつ限定的なものであったことを示唆する証言を引き出すことに注力しました。
これらの証拠と弁護活動に基づき、裁判所に対して、ご依頼者様が事件における従属的な立ち位置に過ぎないことを強く主張しました。
本事例の結末
裁判所は、弁護側が立証した事実やご依頼者様の言い分を認め、ご依頼者様が事件において従属的な立場に過ぎなかったと認定いたしました。
その結果、判決は、検察官が求刑した量刑から3年も減軽された判決を獲得することができました。これは、ご依頼者様の真の関与度に応じた適切な量刑を実現した、非常に重要な結末となりました。
本事例に学ぶこと
本事例から学ぶべきことは、重大事件における共犯事件において、事案の真相を徹底して解明し、当事者の真の関与度を立証することの重要性です。
たとえ客観的に見て強盗致傷という重い犯罪に加担してしまった場合であっても、事件における個々の役割や行動の動機、関与の度合いは千差万別です。
共犯者が不利益な供述をしていたとしても、それに安易に流されることなく、被害者の証言や現場の状況といった客観的な証拠を緻密に分析し、矛盾点を突くことで、ご依頼者様の真実の姿を裁判所に理解してもらうことが可能になります。
特に量刑判断においては、従属性の有無が非常に大きな影響を与えますから、事実関係の徹底的な追及こそが、ご依頼者様の未来を守る鍵となると言えます。
弁護士 遠藤 吏恭