前科とは

前科とは、過去に刑の言い渡しを受けた事実です。

前科の種類として、懲役刑、禁固刑、罰金刑、科料があります。

前科は、公的に記録がされます。具体的には、検察庁が管理する前科調書と、本籍地の市区町村が管理する犯罪人名簿に記録されます。

前科調書に記載された前科は、消えることはありません。
したがって、再び罪を犯した場合は、検察官が前科調書を参照して、それを前提に処分をすることになります。
前科がある場合は、一般的には、より重い処分になるでしょう。

犯罪人名簿の前科は、刑の言い渡しが効力を失ったときには抹消されます。

執行猶予付きの判決の場合も前科になります。

前科がつくことによる不利益は

1.将来、罪を犯したときに、刑が重くなる可能性があります

2.資格や職業の制限

懲役刑や禁固刑を受けると仮に執行猶予が付いた場合も、一定期間又は無制限で資格や職業が制限される可能性があります。主な資格や職業として、次のものがあります。

警備業者及び警備員,建築士,建築業者,宅地建物取引業者,国家公務員,地方公務員,学校の校長・教師,教育委員会の委員,保護司,保育士,社会福祉士,介護福祉士,貸金業者,司法書士,行政書士,旅客自動車運送事業者,自衛隊員,質屋,古物商,商工会の役員,不動産鑑定士,公認会計士,調停員,人権擁護委員,検察審査員(1年以上の懲役・禁錮に限る),裁判官,検察官,弁護士等。

3.履歴書の賞罰欄等で申告しなければならない場合もある

前科を隠していた場合に、会社で後でトラブルになるケースが想定できます。嘘の経歴を申告したとして、解雇等をされる可能性もあります。

4.海外でビザがおりない場合があります

例えば、海外で就労ビザを発行してもらう際に「犯罪経歴証明書」の提出を求められることがあります。
これは、外国の公的機関(大使館・移民局等)から犯罪経歴証明書の提出を求められている場合に、警視庁や県警で発行されます。

前科をつけないためには

前科をつけない方法として、次の方法があります。

1.起訴前

①まず、警察に検察庁へ事件送致をさせない

②事件送致がなされても、検察庁から「不起訴処分」を受ける

2.起訴後

①無罪判決を受ける

日本の刑事司法では起訴後に有罪判決がなされる確率が極めて高いので、前科をつけないためには、まず1の起訴前の段階で刑事責任を免れる方法を目指すことになります。

そして、1の方法を目指す方法としては、次の方法がございます。

(1)被害者のいる事件で自らの刑事責任を認める場合

●被害者から示談を獲得する

⇒被害者は、加害者本人との連絡を避ける傾向にありますので、弁護士が代理で交渉を行うことが効果的です。被害者の方の中には、相手が弁護士であれば、連絡を取ったり、会っても良いという人がいます。

(2)自らの刑事責任を否定する場合(犯人であることの否認、責任能力を争う等)

事件の後すみやかに、

・事件当日の自らの行動を振り返る
・事件を目撃した関係者がいれば、聞き取りを行う
・事件の日時と近い時間において、行動を共にした人物、もしくは自らを目撃した人物がいれば、聞き取りを行う
・目撃者以外に、自らと電話・メールなどで連絡を取った人物がいれば、その者らの通信記録や供述によって、自らのアリバイを立証できないか検討する
・自らの健康状態を立証する
・以上の調査活動の結果をまとめ、警察・検察に対して自らが刑事責任を負わない可能性がある旨の主張を行う

等の活動を行います。これらの活動は、弁護士であれば効果的に行うことができます。特に身柄を拘束されている場合は、弁護士に依頼をするのが肝心です。

前科と「前歴」の違い

前科に似た言葉として「前歴」という用語があります。
前歴とは、警察や検察の捜査の対象となったが、「微罪処分」や「不起訴」となった場合につきます。
前歴だけであれば先に挙げたような資格や就職の制限を受ける心配はありません。ただ、前歴も記録としては残ってしまいます。

●微罪処分(びざいしょぶん)とは

警察が、犯人を検察に送致せずに、刑事手続を警察段階で終了させる手続きです。
つまり、検察庁まで行かず、警察段階で事件が終わります。
「警察のお世話になったけど、注意だけで一日で帰ってきた」という話を聞きますが、それは微罪処分というものにあたります。
微罪処分にするかは、警察の裁量によります。以下のような事柄を総合的に判断しているようです。
・犯罪が悪質ではない
・被害者が許している
・初犯
・身元がはっきりしている
・反省している