1 統計から見た性犯罪の傾向
法務省の調査によれば,性犯罪再犯率は,痴漢型が最も高く,次いで,盗撮型,小児わいせつ型,強制わいせつ型,小児強姦型,単純強姦型の順となっており,集団強姦型が最も低いことが分かっています。
痴漢型や盗撮型は,各都道府県の迷惑行為防止条例違反を構成しますが,これらの行為により懲役刑の実刑に処せられた者の大多数が,それまで痴漢行為で複数回の罰金や執行猶予の処分を受けており,それにもかかわらず同様の行為を繰り返していることが分かります。
特に,痴漢型は,他の性犯罪者類型と比べて,再犯率が高く,短期間のうちに再犯に及ぶ傾向があると言われております。

 

2 「性障害」と専門の医療機関における治療
性犯罪は被害者の尊厳を侵害する犯罪であり,国民の関心も高いと言えます。
性犯罪の被害者や社会に対する影響はさることながら,性犯罪を犯したその人自身も「性障害」に悩まされている可能性があります。
そのような場合,精神科医などの専門の医療機関における治療を受けることが,性犯罪を犯した人の行動を変え,ひいては性犯罪被害者を減らすことに繋がりますので有益です。
また,弁護士は,性犯罪を犯した人と,捜査段階(在宅も含む)や公判段階という刑事弁護を中心に関わりますが,そのような段階においても,「性障害」と向き合い,認知行動療法(CBT)などの治療を開始する(または,その準備をする)ことが,再犯可能性を減少させ,一般情状事実としても,量刑上,有利に働くことが期待できます。
実際に,執行猶予や保護観察となった事例において,「医療機関において治療を開始していること」を「有利な事実」として挙げる例が散見されます。
従って,痴漢や盗撮などの性犯罪を行ってしまった方には,できるだけ専門の医療機関の受診をお勧めすることにしています。
ご参考までに,当事務所の弁護士が担当した被告人や少年が利用したことのある医療機関には,「性障害専門医療センターSOMEC」などがあります。この医療機関では,認知行動療法や薬物療法,家族の方向けの支援セミナーやミーティングを実施しているようです。

 

3 弁護士がお手伝いできること
当事務所では,医療機関をお探しの方には,医療機関の選定や治療に関しても,刑事手続との関係も踏まえたアドバイスを心掛けており,医療機関が決まった場合には,医療機関に対する適切な説明や連絡を通じて,スムーズに治療へ移行できるよう,サポートします。

特に,身柄事件(勾留され,または鑑別所に入っているケース)では,接見交通権が認められている弁護士を通じた調整が欠かせません。もちろん,性犯罪以外の犯罪と同様,保釈請求などの身柄釈放に向けた弁護活動も並行して行います。

ご本人はさることながら,ご家族の方におかれましても,色々とご心配が絶えないことと思います。私たちと一緒に一つずつ問題を解決していきましょう。