はじめに

どのような運転をすると道路交通法違反になる?

道路交通法は,交通の安全を確保するために設けられた法律ですので,交通に関する様々な規定が設けられています。

特に重い交通違反行為に対しては,刑罰が定められており,犯罪に該当します。

具体的には,以下のような規定がございます(一部)。

① 飲酒運転(酒酔い運転・酒気帯び運転など)

② スピード違反(速度超過)

③ 無免許運転

④ ひき逃げ運転(救護義務違反)

⑤ 危険運転

飲酒運転について

ニュースでも目にすることの多い飲酒運転は,飲酒により運転者の注意力に重大な影響を与え,危険性が高まることから,道路交通法により禁止されております(道路交通法65条)。

(1)酒酔い運転

酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態)にあったのに運転した場合には,5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます(道路交通法117条の2第1号)。

(2)酒気帯び運転

身体にあるアルコールの程度が血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム以上,又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上の状態で運転した場合には,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(道路交通法117条の2の2第3号)。

(3)飲酒検知拒否

警察官は,車両に乗車し,又は運転しようとしている者が飲酒運転をするおそれがあると認めた場合には,アルコールの程度を検査するため,その者の呼気を検査することが認められています(道路交通法67条第3項)。

運転者が,呼気検査を求められたのに拒否した場合には,警察官の停止に従わなかった者として,3月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処される可能性があります(道路交通法119条8号,同法67条第1項,第3項)。

(4)自動車の提供者の責任

酒飲み・酒気帯び運転をするおそれがあると知りながら,自動車を他人に提供(貸与)した場合には,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処される可能性があります(道路交通法117条の2の2第4号,同法65条2項)。

(5)酒類の提供者の責任

酒気帯び運転をするおそれがあると知りながら,他人に酒類を提供し,又は飲酒を進めた場合には,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処される可能性があります(道路交通法117条の2の2第5号,同法65条3項)・

酒飲み運転をするおそれがあると知りながら,他人に酒類を提供し,又は飲酒を進めた場合には,5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処される可能性があります(道路交通法117条の2第2号,同法65条2項)。

(6)同乗者の責任

酒気帯び運転であることを知りながら,自動車を運転して自己を運送することを求め,又は依頼して,自動車に同乗した場合には,2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処される可能性があります(道路交通法117条の3の2第3号,同法65条4項)。

酒飲み運転であることを知りながら,自動車を運転して自己を運送することを求め,又は依頼して,自動車に同乗した場合には,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処される可能性があります(道路交通法117条の2の2第6号,同法65条4項)。

スピード違反(速度超過)

道路標識により最高速度が指定されている道路では,その最高速度を超えてはならず,その他の道路については,一般道では60キロ(原付は30キロ),高速道では100キロを超えてはなりません(道路交通法22条1項及び施行令)。

これに違反した場合には,6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処されます(道路交通法118条第1号)。

無免許運転

何人も,公安委員会の運転免許を受けないで自動車を運転してはなりません(道路交通法64条)。

無免許にかかわらず運転した場合には,2年以下の懲役又は50万円の罰金に処されます(道路交通法117条の3の2第1号)。

ひき逃げ

自動車の運転者は,その自動車の交通により人の死傷があった場合,すなわち,人身に対する交通事故を起こした場合には,直ちに自動車の運転を停止して,負傷者を救護し,道路上の危険を防止するなどの必要な措置を講じなければなりません(救護義務。道路交通法72条1項前段)。

自動車の運転者が,当該自動車の交通による死傷があった場合に,前述の救護義務に違反したときは,5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(道路交通法117条1項)。

また,人の死傷が当該運転者の運転に起因するものであるときは,10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます(道路交通法117条2項)。

危険運転

近年,飲酒運転に起因するなどの特に悪質な事案が目立ち,平成25年11月には,「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」が成立しました(自動車運転死傷行為処罰法)。

この法律では,以下のような6つの危険な運転が,運転者の故意により行われた場合に,致傷の場合には15年以下の懲役,死亡の場合には1年以上,20年以下の懲役が定められております(同法2条)。

① アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為

② 進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為

③ 進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為

④ 人又は車の通行を妨害する目的で,走行中の自動車の直前に侵入し,その他通行中の人又は車に著しく接近し,かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

⑤ 赤信号を殊更に無視し,かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

⑥ 通行禁止道路を進行し,かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

 

また,新たに過失運転致傷罪アルコール等影響発覚免脱罪が定められました。

これは,アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が,運転上必要な注意を怠り,よって人を死傷させた場合において,その運転の時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で,さらにアルコール又は薬物を窃取すること,その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることその他の影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたときは,12年以下の懲役に処されることになります(同法4条)。

昨今,交通事故を起こしたが事件の発覚を恐れ,逃げてしまった場合における,いわば「逃げ特」を回避するために設けられ,ひき逃げの刑罰と併合されると,最高で18年の懲役刑に処される可能性があります。

弁護活動のポイント

起訴前の段階であれば,不起訴を狙い,被害者に対する被害弁償や謝罪を迅速に進めます。もし,身柄拘束がされているのであれば,ご家族とも打合せの上,早期釈放に向けた活動を並行することになります。

起訴後の段階であれば,そもそも事実関係に争いがあるのであれば,無罪を視野に,目撃者からの事情聴取や現場検証を検討し,可能な限り客観的な証拠を収集します。事実関係に争いがない場合でも,被害者に対する被害弁償や謝罪を迅速に進めるとともに,身柄拘束されている場合には,ご家族とも打合せの上,保釈請求を行い(保釈金の準備が必要となります),早期釈放に向けた活動を行います。