突然の出来事に、頭が真っ白になっていることとお察しします。

「一時の感情で手を出してしまった」、「相手が先に手を出してきたから応戦しただけなのに」、理由はさまざまでしょうが、「逮捕」という現実は、これまでの日常を一瞬で奪い去るほどの重い出来事です。

「逮捕されてから最初の72時間が、その後の人生を左右する最大の正念場であります。

この記事では、人を殴って(暴行・傷害罪)逮捕された後の具体的な流れと、刑事手続きの全貌、そしてなぜ一刻も早く弁護士を入れた方が良いのかについて、法的観点から徹底的に解説します。

そもそも、暴行罪とは?

刑法第208条にはこう記されています。

「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。」

専門用語で言うと、暴行とは「人の身体に対する不法な有形力(ゆうけいりょく)の行使」を指します。

不法な: 正当な理由(正当防衛など)がないこと。
有形力: 物理的なエネルギーのこと。
行使: それを相手に向けること。

つまり、「相手の体に物理的な刺激を与えたけれど、怪我をさせるまでには至らなかった」状態を暴行罪と呼びます。

「えっ、これも?」意外な暴行の具体例

「殴る・蹴る」が暴行なのは当然ですが、裁判例では以下のような行為も「暴行」とみなされています。

直接、体に触れていなくても成立する場合があるのがポイントです。

・胸ぐらをつかむ・服を引っ張る: 体に直接触れていなくても、身に着けているものへの刺激は「身体への有形力」とみなされます。
・水をかける・塩をまく: 液体や粉末を浴びせる行為も暴行です。
・近くで激しく太鼓を叩く・大音量を浴びせる: 聴覚への極端な刺激も、物理的なエネルギーの行使として暴行になり得ます。
・髪の毛を切る: 痛みはなくても、身体の不可分な一部への攻撃です。
・タバコの煙を吹きかける: 執拗に行えば暴行と認定される可能性があります。

逮捕直後、待ち受ける「72時間の壁」

警察に逮捕されると、直ちに外部との連絡は遮断されてしまいます。
家族に電話することも、職場に欠勤の連絡を入れることもできません。

ここから、刑事訴訟法で定められた極めてタイトなタイムスケジュールが動き出します。

① 警察による取調べ(48時間以内)

逮捕から48時間以内に、警察は取調べを行い、事件を検察官に送致(送検)するかどうかを決定します。

この間、警察署内の留置場に収容されることになります。

② 検察官への送致(24時間以内)

事件が検察庁に送られると、検察官はさらに24時間以内に、「勾留(こうりゅう)」して引き続き拘束する必要があるかどうかを判断します。

③ 勾留決定(最大20日間の拘束)

検察官が「さらに調べる必要がある」と判断し、裁判所がそれを認めると、「勾留」が決定します。

勾留期間は原則10日間ですが、延長されるとさらに10日間、合計で最大20日間も身柄を拘束され続けることになります。

【重要】

逮捕から勾留が決定するまでの最大72時間は、たとえ家族であっても面会することはできません。

この期間に唯一面会(接見)できるのは、弁護士だけです。

刑事手続きの全体像:釈放か、起訴か

勾留期間が終わるまでに、検察官は「起訴」するか「不起訴」にするかを決定します。

起訴(裁判へ)されたということは、検察官が「処罰が必要」と判断したことを意味します。

起訴には、具体的に2種類あります。

公判請求: 正式の裁判。法廷で審理が行われます。
略式請求: 100万円以下の罰金刑の場合、書面審理のみで終わらせる手続き。裁判所へ行く必要はありませんが、「前科」はつきます。

不起訴(事件終了)とは、検察官が「裁判にかける必要はない」と判断したことを意味します

具体的には、以下の理由で不起訴処分とされます。

起訴猶予: 罪は認めるが、反省している、示談が成立しているなどの理由で今回は許すというもの。
嫌疑不十分: 証拠が足りない場合。

不起訴になれば、その時点で釈放され、前科はつきません。

暴行・傷害事件において、この「不起訴(起訴猶予)」を勝ち取ることが弁護士の最大のミッションとなります。

「暴行罪」と「傷害罪」の違いを知る

人を殴った場合、相手の怪我の有無によって適用される罪名が変わります。

罪名成立要件罰則
暴行罪叩く、突くなど、不法な物理力を行使したが怪我はなかった2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金等
傷害罪殴って怪我をさせた(打撲、骨折、擦り傷など)15年以下の懲役または50万円以下の罰金

傷害罪になると、罰則が一気に重くなります。たとえ「全治1週間の打撲」であっても傷害罪は成立します。診断書一枚であなたの立場は大きく変わるのです。

弁護士を依頼する5つの圧倒的なメリット

逮捕されたとき、最もやってはいけないことは「何もせず待つこと」です。

弁護士(私費で雇う「私選弁護人」)を入れることで、以下のような具体的なメリットが得られます。

① 唯一の味方として「接見」し、取調べをアドバイスする

逮捕直後の孤独と不安は、想像を絶するものです。警察官は「認めたほうが楽になるぞ」と揺さぶりをかけてくることもあります。

弁護士はすぐに駆けつけ、「黙秘権」の使い方や、不当な誘導に乗らないためのアドバイスを行い、徹底的に守ります。

② 早期釈放(勾留阻止)に向けた働きかけ

弁護士は、裁判官や検察官に対し、「証拠隠滅の恐れがない」、「逃亡の恐れがない」、「家族等の監督がある」といった主張を法的な書面で行います。

これが認められれば、勾留されずに自宅へ帰れる可能性(在宅捜査)が高まります。

特に、スピード感が不可欠です。

③ 最重要事項:被害者との「示談交渉」

暴行・傷害事件において、「示談の成立」は最強の防御カードです。

被害者に謝罪し、治療費や慰謝料を支払って「許してもらう(宥恕条項)」ことができれば、検察官は高い確率で不起訴処分を下します。

しかし、加害者本人やその家族が被害者に連絡を取ろうとすることは、二次被害や証拠隠滅とみなされ、強く拒絶されるのが通常です。

第三者である弁護士だからこそ、冷静な交渉が可能になります。

④ 供述調書のチェックと不当な取調べの阻止

一度サインしてしまった取調べの「調書」は、後から覆すことが極めて困難です。

弁護士は、事実と異なる記載がないか厳しくチェックし、不利な証拠が作られないよう監視します。

⑤ 職場や学校への影響を最小限に抑える

長期間の拘束は、社会生活に大きな影響を及ぼします。

弁護士は、職場への説明の仕方をアドバイスしたり、早期釈放を実現することで、事件が周囲に露見するリスクを最小限に抑える活動をします。

まとめ

まずは「初動」を間違えないでください。

人を殴ってしまったことは事実かもしれません。しかし、その後の対応次第で、未来は変えられます。

もし、これをお読みの方が「逮捕された人のご家族やご友人」であれば、一刻も早く弁護士に相談してください。

警察署に電話して「当番弁護士を呼んでください」と伝えるか、信頼できる私選弁護士に接見を依頼してください。

時計の針は止まってくれません。最初の72時間が経過する前に、まずはプロの助けを借りる決断をしてください。

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グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 安田 伸一朗

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