紛争の内容
本事例は、ご依頼者の方が酒に酔った勢いで配偶者の方との間で喧嘩となり、暴行を加えて怪我を負わせてしまった傷害事件です。近隣住民の方からの通報により警察が現場に駆けつけ、ご依頼者の方はそのまま現行犯逮捕され、身柄を拘束されることになりました。
ご依頼者の方は、ご自身が物を投げるなどの暴行をふるい、配偶者の方に怪我を負わせてしまった事実を認めておられました。何よりも、被害者である配偶者様に対し、心から謝罪し、許しを得たいという強いご意向をお持ちでした。

交渉・調停・訴訟等の経過
ご依頼を受け、直ちに弁護人が配偶者の方へ連絡を取らせていただき、ご依頼者の方の深い謝罪の気持ちを丁寧にお伝えいたしました。同時に、被害者の方の現在のご心境や事件に対するご意向を慎重に確認いたしました。
その結果、配偶者の方からも、ご依頼者様が逮捕により身柄拘束が続くことで、ご家庭の家計や今後の生活に大きな影響が出てしまうため、示談に応じるという前向きなご回答を頂戴することができました。
被害者の方のご意向を踏まえ、示談条件を早急に調整し、直ちに示談書を迅速に作成・締結いたしました。示談成立後、その示談書と配偶者の方の処罰を望まない旨の意思表示を、即座に検察庁へ提出いたしました。

本事例の結末
検察官は、示談が迅速に成立し、被害者である配偶者の方の処罰感情がないこと、そしてご依頼者様が深く反省している点を確認しました。
その結果、ご依頼者の方は勾留開始からわずか1週間という極めて早期の段階で不起訴処分を獲得することができました。これにより、ご依頼者の方はすぐに身柄を釈放され、家庭生活に戻り、社会生活への早期復帰を果たすことができました。
お仕事でも何らの処分を受けることなく無事に元の生活に戻ることができました。

本事例に学ぶこと
本事例からは、刑事事件、特に家庭内での暴行事案のような被害者との関係性が深い事件において、初期段階での弁護活動の迅速性が結果を大きく左右することを学ぶことができます。
逮捕直後の身柄拘束が続いている状況は、ご依頼者様だけでなくご家族の生活基盤をも脅かしますが、弁護人が被害者の方の心情に最大限配慮しつつ、ご依頼者の方の真摯な謝罪の意思を橋渡しし、示談交渉を速やかに進めたことが、勾留期間を最小限に抑えるとともに、不起訴処分という最良の結果に繋がりました。
刑事手続においては、一刻の遅れが身柄拘束期間の長期化を招くため、この迅速な対応こそが、ご依頼者の方の権利とご家族の生活を守る上で何より大切であると言えます。

弁護士 遠藤 吏恭