紛争の内容
ご依頼者の方は、ある組織的な詐欺事件に関与した疑いで警察に逮捕されました。しかし、実際にはご依頼者の方は詐欺行為に一切加担しておらず、犯罪が行われていること自体も全く認識されておりませんでした。
一方で、本件は組織的な犯行という性質上、捜査機関からは「何らかの役割を担い、共謀して犯行に及んだ」という共謀共同正犯の強い疑いをかけられてしまいました。事実とは異なる嫌疑を晴らさなければならない極めて深刻な状況でした。

交渉・調停・訴訟等の経過
本件は事実を争う「否認事件」であったため、警察および検察への対応が勝敗を分ける鍵となりました。
一般的に否認事件では、不用意な供述が証拠として悪用されるのを防ぐため、取り調べに対して「黙秘」を貫くことが鉄則とされています。しかし、本件においては単に黙秘を続けているだけでは、捜査機関が収集した客観的な状況証拠のみが独り歩きし、そのまま起訴されてしまう危険性が高いと判断いたしました。
そこで、不起訴処分を確実に獲得するために、弁護人として「真実を積極的に開示する」という戦略を採りました。連日のように接見(面会)へ足を運び、ご依頼者の方と詳細な打ち合わせを重ねて信頼関係を構築しました。その上で、弁護人から検察官や警察に対して直接連絡を取り、こちらの主張を裏付ける事実関係を詳細に伝えるなどの活動を粘り強く展開いたしました。

本事例の結末
弁護活動の結果、検察官は「裁判で有罪を立証するに足りる十分な証拠がない」と判断し、ご依頼者の方は不起訴処分となりました。これにより、ご依頼者の方は刑事罰を免れ、早期に社会復帰を果たすことができました。

本事例に学ぶこと
本事例は、否認事件における弁護方針の決定がいかに重要であるかを如実に示しています。教科書通りの黙秘権行使だけでは、時として捜査機関側の論理を突き崩せない場面がありますが、本件ではご依頼者の方との強固な信頼関係を礎に、攻めの弁護に転じたことが奏功しました。
もしも接見を通じた方針のすり合わせが不足し、取り調べへの対応を誤っていれば、そのまま起訴されていた可能性が極めて高い事案でした。事案の特性を見極め、真実をどのように捜査機関にぶつけていくかという戦略的な判断、そしてそれを支える弁護士とご依頼者の方との密なコミュニケーションこそが、最良の結果を生む鍵となります。

弁護士 遠藤 吏恭