紛争の内容
本事例は、依頼者の方が傷害事件の被疑者として逮捕・起訴された事案です。
第三者との間で発生した暴行行為により、相手方に怪我を負わせてしまったという内容です。
依頼者の方はすでに刑事裁判の被告人として起訴をされた段階で、当事務所にご依頼をいただきました。
事件の基本的な事実は認めているものの、暴行の態様や経緯の一部については、検察側の主張する事実と依頼者の方の認識との間に争いがある状況でした。
交渉・調停・訴訟等の経過
被告人として起訴された段階から弁護人として選任され、直ちにサポートを開始いたしました。
特に、本件では暴行の態様に一部争いがあったため、事実関係を正確に把握するために、法廷での証人尋問を集中的に実施し、細かい事実の追及を徹底いたしました。
また、裁判の準備期間を通じて、依頼者の方と細かい接見を重ね、事件に至った経緯や背景、更生に向けた具体的な行動について聴取し、反省の意を深く示すための準備をいたしました。
さらに、依頼者様の生活基盤を維持し、更生を支える環境を整えるため、ご家族との連絡を綿密に行い、裁判所に対して、今後の監督体制や社会復帰への計画を具体的に提示いたしました。
この一連の活動は、依頼者様がそれまでの生活を壊さずに、社会内で更生できることを裁判所に理解していただくための重要な要素となりました。
本事例の結末
証人尋問の結果、暴行の態様に関する争点の一部について、依頼者の方に有利な事実が認定されました。
また、綿密な接見と家族の協力体制の構築が評価され、依頼者の方の深い反省と更生意欲が認められることとなりました。
その結果、裁判所は実刑判決ではなく、実刑を避ける執行猶予付きの判決を言い渡すという結論に至りました。依頼者の方は直ちに収監されることなく、社会に戻って更生を目指す機会を得ることができました。
本事例に学ぶこと
本事例からは、刑事事件において、被告人として起訴された段階からの綿密かつ戦略的な弁護活動が、量刑判断に極めて大きな影響を及ぼすことがわかります。
まず、事件の核心となる事実、特に暴行の態様といった争点に対して、証人尋問などの手段を用いて細かく事実を追及する姿勢が、裁判所の事実認定に有利に働き、結果として重すぎる量刑を回避する基盤となりました。
単に自白を促すだけでなく、依頼者の方の主張を徹底的に検証し、正確な事実を裁判所に伝える粘り強さが重要です。
次に、量刑は事件そのものの重さだけでなく、被告人自身の反省の程度や今後の更生環境によって大きく左右されます。
今回のケースでは、依頼者の方ご本人との細かい接見を通じて真摯な反省を促すとともに、ご家族との連携を密に行い、社会復帰後のサポート体制を具体的に整備し、それを裁判所に明確に提示したことが、執行猶予判決という結果に繋がりました。これは、弁護活動が法的な側面に留まらず、依頼者の方の人生全体を見据えた総合的なサポートでなければならないことを示唆しており、依頼者様がそれまでの生活基盤を失うことなく、再出発できる道を確保することの重要性を改めて学ぶ事例となりました。
弁護士 遠藤 吏恭







